0.情報提供
きっかけは、とあるアーティストの方々が中田に、「新店舗の大阪ブルーノートには車椅子の方の電動昇降機があるよ」と情報を提供していただいたことからでした。その方々の紹介で大阪ブルーノートを取材することができました。
1.お店のチャレンジドのお客さまに対する取組み、姿勢について
- (1)移転前後のブルーノート
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- 移転前
旧店舗は大阪・梅田のターミナルから少し離れた場所にあり、お店もエレベーターのない地下にあったため、チャレンジドにとってアクセスしやすい環境ではありませんでした。しかし、それでも来店するチャレンジドが何人もいたので、「その方々に対して何かもっとできるのではないか」という気持ちを社員全体で共有していたそうです。
1stステージと2ndステージを観る場合、幕間は退店することになっていましたが、中田が移動することが大変なので店内に留まれるようにして欲しいと願い出ると、快く対応してくださいました。
- そして新店舗へ
2004年11月、ハービス ENT内の地下に店舗が移りました。地下といってもターミナルから地下道で結ばれ、商業ビル内にあるため地上とのアクセスも問題ありません。けれども商業ビル内ということで、店内をすべてバリアフリーにするには面積が狭く、スロープなどを設置できなかったことが残念でした。スロープに代わるものとして、独自に電動昇降機を2台設置しました。
- 移転前
- (2)チャレンジドの来店者数
- 「旧店舗に比べ増加した」とのこと。現状をふまえて、適切な対応の仕方を把握したいという店舗側の姿勢はあります。チャレンジドの状況が多様なため、ニーズに合ったサービスができているのか、またどう取り組めばよいのかスタッフの方々は暗中模索している段階です。
- (3)スタッフの方のチャレンジドに対する知識
- 知識の個人差はあるでしょうが、どのような障害の種類があり、どのような応対をするのかという知識の共有ができていないようです。社員研修も確立されておらず、アルバイトが多いためなかなか徹底することができないのが現状。
(追加取材)
社員研修を始められました。
- (4)現時点での対応
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- 予約時に障害の様子と希望するサービスを申し出があれば、相談の上適切な対応がスムーズにできるよう段取りする。
- 視覚障害者のお客さまの誘導ができるスタッフもいる場合がある。
- 精算は一般のお客さまと別で座席にて行える。
- ブルーノートが独自に導入した電動昇降機を使うことができる。
- テーブル席フロアを希望する車椅子のお客さまは、スタッフが車椅子ごと抱えて、舞台上手側の通路から降りることは可能。
- 予約時に障害の様子と希望するサービスを申し出があれば、相談の上適切な対応がスムーズにできるよう段取りする。
2.フロアの構造
入口からフロント障害者用トイレ、カウンター席まではバリアフリーになっています。カジュアルシートやテーブル席へは、車椅子のお客さまが独力で行くことはできませんが、舞台に向かって右側の階段は少し広めになっているのでテーブル席フロアへ降りることができます。
上の写真の階段を降りて左に広がるテーブル席。テーブル席の一番外側は、壁伝いに横一列ソファ席になっています。そこには向かい合わせに椅子が置かれていないのでその前の4人掛けのテーブル席とはややスペースがあり、車椅子で着席することができます。
ボックスシートはカウンター席とソファ席の間の中段に設置されています。ボックスシートは背面をシートで覆われるため、低音が響き大きく聞こえるので音を大きすぎると感じる場合もあり、チャレンジドが座る場合は体調に特に注意しなければなりません。車椅子だと狭過ぎて入ることはできません。
【救護室】
もし体調が悪くなったりした場合、ステージ裏側からビル共用の救護室へ行くことができます。そこから救急車の手配もすぐできます。係員に告げれば、すぐに対応していただけるので安心です。
3.進化し続けるチャレンジド対応
最初の取材から追加取材の間に、新たな展開をされています。日々進化し続けるチャレンジド対応をご紹介します。
新店舗へ移転した時、電動昇降機とスタッフが車椅子ごと抱えてテーブル席への誘導するという選択肢を用意していました。
しかし、旧店舗にはあった独力で着けるテーブル席を要望する方が多いので、舞台に向かって右側の少し広くなっている階段のそばに独力で行ける席を用意しようとしました。そこに行くためには階段を跨がなくては行けないので、その為の補助具をスタッフの手製で作られていました(白いテープが貼られている所が補助具)。
ただし、車椅子の形状によりご利用できない場合があります。
そして、電動車椅子のお客さまが来店し、独力で着けるテーブル席を要望されました。その場までは行くことはできたが、スペースが足りず方向転換ができませんでした(場所は「2.フロアの構造」の最初の写真と同じ場所で、舞台に向かって右側の階段)。
独力で着けるバリアフリーなテーブル席を設置する予定です。
4.電動昇降機の使い方
店舗側がチャレンジドのお客さまに素敵な時間を提供したいという姿勢がこの装置に表れています。どっしりとした安定感があります。2台完備。 常設ではないので、予約時に利用の旨を伝えておくことで定位置に用意していただけます。
こちらは電動昇降機のスイッチ部分を拡大した写真です。手前のレバー(写真左の1)は、右のひじかけの先端部分。上に引き揚げると椅子が上昇し、下向きに押すと下降。動きは滑らかで問題ないと思います。長いレバー(2)は、椅子部分を回す為のレバー。
レバーを椅子側に倒すと座面が回転します(正確には座面の固定が解除され、手動で水平方向に動かせるようになります)。解除状態で、左の写真のように正面から左側に約80度まで動かせます。座って正面を向いたらレバーを外側に倒し、椅子を固定します。
これは、電動昇降機の背もたれ部分に貼ってあった警告事項。「許容荷重80kgを超える状態では使用しない。また、強い衝撃を与えない。イスが破損、故障し、けがをするおそれがあります」とのこと。
- 設置場所があらかじめ決められている。
- 車椅子からこの装置に乗り移る際、移りにくい人がいる。
- 重量の関係上、装置をずらしにくい為、装置とカウンターの間が狭くなり、座席の上下時は注意が必要。
- 座面サイズが、体型によって利用しにくい場合がある。
- 足載せがなく座面を上昇させると足が宙に浮くため心許ない。
(追加取材)
足載せが設置されました。 - 舞台がよく見えるまで座面を上げた時のために身体を固定するベルト等が必要な場合がある。
- 座位が保てる人しか利用できない。
5.障害者席

障害者席は3種類。(画像をクリックすると座席表が拡大されます)
なお、少し広めになっていて、補助具が取り付けることができる階段はピンク色で表示しています。
- 電動昇降機の設置場所(オレンジのエリア)。
- 車椅子ごと抱えて行くテーブル席フロアの座席(青のエリア)。
- 独力で着けるテーブル席(緑のエリア)。
6.今後の課題
- チャレンジドの心理は、一概には言えないが「多大な迷惑をかけながら自分の希望を果たすくらいなら行かない」という人が多いことに対し、店舗側は「従業員が対応するので安心して来ていただきたい」と伝えたい意向。しかし現時点で体制が徹底されていないので少し不安。
- 電動車椅子はそれだけで重量が100kgあるものもあり、利用者を乗せたまま階段の移動は困難である。
- 段差をスロープにするのにはかなりのスペースを要するので現状改善は無理である。
- お客の誘導で「先入れ」「後出し」がチャレンジドとしては安心出来ると思われるのだが、現在この誘導は行われてはいない。
(追加取材)
開場前に来られたお客さまや終演後時間のあるお客さまに対して、「先入れ」「後出し」を実施しています。 - 経営が系列のホテル従業員の研修を取り入れるという横の連携は取りにくいようだ。アルバイトへの徹底は難しいにしろ、社員だけでも研修していただければ、と思う。
(追加取材)
社員研修を始められました。
チャレンジドの受け入れ態勢を整備したいという店舗の姿勢は大変良いのですが、健常者からの観点でしか現在判断がつかないようなので、従業員が気付かない部分はCOTS等からの意見を参考に改善したい、とのこと。今後も店舗側とCOTSのコミュニケーションは継続されることが望ましいでしょう。とりあえず、現時点では事前に自分の状況を店側に伝えておくことが一番のようです。